福祉タクシー


福祉タクシー(道路運送法4条許可)とは

福祉タクシーとは、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)の経営許可を取得し、要介護者・身体障害者等を対象に有償で輸送する事業です。
道路運送法第4条に基づく中部運輸局長の許可が必要で、個人事業主・法人どちらでも申請することができます。

「福祉タクシー」と「介護タクシー(ぶらさがり)」は別物です
一般によく「介護タクシー」と呼ばれる場合でも、法律上は大きく異なる2つの制度が存在します。このページでは道路運送法第4条許可(福祉タクシー)について解説します。ぶらさがり(78条3号)については別ページをご参照ください。

福祉タクシー開業のメリット

豊富な申請実績から見えてきた、福祉タクシー独立開業ならではのメリットをご紹介します。

メリット 01

自宅・少ない初期費用で開業できる

飲食店のような大規模な設備投資や家賃・仕入れが不要です。車両さえあれば開業でき、自己所有の土地建物を営業所にすれば初期費用をさらに抑えられます。主な追加費用はタクシーメーター設置(約15万円)と事業用任意保険です。

メリット 02

一度取得すれば更新不要

古物商・建設業許可など多くの許可は数年ごとの更新と手数料が必要ですが、福祉タクシーの4条許可は一度取得すれば更新手続きが不要です。維持コストが低く、長期的に安定した経営が可能です。

メリット 03

副業・週末起業・定年後からもOK

予約制なので一日のスケジュールを立てやすく、空き時間の活用も容易です。副業からスタートする方、週末だけ運行する方、定年後に新しいことを始めたい方まで、様々なスタイルで始められます。年齢制限もありません。

メリット 04

価格競争に巻き込まれにくい

運賃は認可制のため一定の範囲内での設定となり、極端なダンピング競争が起きにくい業種です。近隣の同業者と連携し、予約が重なった際に紹介し合うなど、地域内での協力関係も生まれやすいのが特徴です。

運送できる対象者と使用できる車両

福祉輸送限定許可では、輸送できる対象者と使用できる車両が定められています。運送の申込があった際は、対象者に該当するか確認する義務があります。

運送対象者(付添人の同乗も可能)

  • 身体障害者手帳の交付を受けている方(身体障害者福祉法第4条)
  • 要介護認定を受けている方(介護保険法第19条第1項 要介護1〜5)
  • 要支援認定を受けている方(介護保険法第19条第2項 要支援1・2)
  • 肢体不自由・内部障害・知的障害・精神障害等により単独での公共交通機関の利用が困難な方

使用できる車両

① 福祉自動車

車椅子のまま乗車できるリフト付き・スロープ付き車両等。皆さんがイメージする介護タクシーの車両です。

② 一般のセダン型等

介護福祉士・訪問介護員・ケア輸送サービス従事者研修修了者が乗務する場合は一般乗用車でも運行できます。

流し営業は禁止です。営業所への運送申込があった場合のみ運送できます。街中で手を挙げたお客様を乗せることはできません。

許可申請の要件と注意点

申請にあたり、以下の要件をすべて満たす必要があります。経験上、まず①の都市計画法の確認を最初に行うことが最重要です。

都市計画法上の確認 最初に確認

  • 営業所・車庫の場所が介護タクシー事業用途として使用可能かを事前に市町村窓口へ確認する
  • 市街化調整区域・農業専用地域は原則として営業所・車庫に使用不可の場合がある
  • 農地(地目:田・畑)は農地法上の確認も別途必要
  • この確認をせずに申請しても意味がありません。当事務所では必ずここから着手します

営業所の要件

  • 使用権限のある事務所スペースが必要
  • 賃貸の場合、契約書上居住用途限定でないこと
  • 申請時点で1年以上の使用権原があること(賃貸借契約書等で確認)

車庫の要件

  • 営業所から直線2km以内に設置
  • 車両の前後左右それぞれ50cm以上の余裕スペースを確保
  • 前面道路が車両制限令に抵触しないこと(市道→市役所、県道→県へ幅員証明取得)
  • 私道の場合は全地権者の承諾書が必要
  • 土地建物の1年以上の使用権原が必要

車両の要件

  • 福祉車両または資格者乗務の一般車両を1台以上確保
  • 申請時点で車両が特定されていることが必要(新車・中古車を問わず)
  • 許可後、事業用(緑ナンバー)への変更が必要

資格・人員の要件

  • 第二種運転免許(タクシー免許)が必要。申請時点では不要だが許可日までに取得すること
  • 法令試験に合格すること(30問中24問以上正解。申請約1ヶ月後に三重陸運支局で受験)
  • 法人の場合は常勤役員のうち1名が受験。不合格でも申請は却下されません。約1ヶ月後に再試験があります
  • 運行管理者・整備管理者の選任が必要

資金・保険の要件

  • 開業から2ヶ月分の運転資金を確保(一般的に200万円程度が目安)
  • 銀行残高証明書を申請時・許可前の2回提出する必要がある
  • 2回目の残高証明書の金額が不足していると不許可になるため、申請中も残高を維持すること
  • 対人8千万円以上・対物200万円以上の任意保険への加入
法令試験について(中部運輸局管轄・三重県)
申請後約1ヶ月後に三重陸運支局で実施されます。道路運送法・旅客自動車運送事業運輸規則等から30問出題され、24問以上正解(80点以上)で合格です。不合格でも申請は却下されません。約1ヶ月後に再試験が開催され再受験できます。
当事務所では試験対策テキストのご提供等、合格に向けたサポートも行っております。
※東京・千葉・神奈川・埼玉・群馬・栃木・茨城・山梨での申請は試験免除ですが、三重県は試験ありです。

申請から開業までの流れ

書類準備から事業開始まで、最低でも6ヶ月以上かかります。開業したい時期を先に決め、そこから逆算して準備を始めることが大切です。

1事前準備 無料相談・要件確認・書類収集
都市計画法の確認・営業所・車庫・車両・資金の要件確認を行います。法人設立・定款変更が必要かもここで確認。当事務所では事前相談の段階から費用・スケジュールをお示しします。
2書類作成 申請書類の作成・準備
事業計画書・所要資金および事業資金の内訳書(開業から1年間)・車両明細・車庫図面等を作成します。登記事項証明書・残高証明書・賃貸借契約書等の添付書類も並行して収集します。
3三重陸運支局 申請書提出・事前チェック(輸送監査)
申請書類を三重陸運支局へ持参し提出・事前確認を受けます。書類の不備・補正事項があればここで修正します。この段階でのチェックが許可取得の鍵となります。
4中部運輸局 中部運輸局による本審査(約3〜4ヶ月)
三重陸運支局を経由して中部運輸局で審査が行われます。審査中に補正・追加書類の指示がある場合は速やかに対応します。
5法令試験 法令試験の受験(申請約1ヶ月後)
三重陸運支局にて道路運送法等の法令試験を受験します(30問中24問で合格)。当事務所では試験対策テキストをご提供します。
6許可取得 許可証交付・登録免許税の納付(3万円)
当事務所では許可証交付の翌日にでも次の運賃・約款の申請ができるよう、事前から準備を整えます。
7運賃・約款認可 運賃・運送約款の認可申請(約1ヶ月)
ケア運賃・介護運賃等の種別と金額を申請します。ケア運賃は自動認可運賃の範囲内で、近隣同業者の設定も参考に決定します。
8開業準備 各種届出・設備整備・開業準備
運行管理者・整備管理者の選任届、車両の緑ナンバー変更、タクシーメーター取付・計量検査、任意保険加入、掲示類の整備等を行います。
9開業 運輸開始届の提出・事業スタート
三重陸運支局へ運輸開始届を提出し、福祉タクシー事業を開始します。開業後の営業所変更・増車等の変更手続きもお気軽にご相談ください。

許可後・事業開始までに行うこと

施設・設備
  • 営業所・車庫・休憩仮眠施設の整備
  • 運行管理・整備管理規定の作成
  • 運賃・約款・看板の掲示
  • 地図の備え付け
車両関係
  • 緑ナンバー(事業用登録)への変更
  • タクシーメーター取付・計量検査
  • 任意保険への加入
  • 車体表示(社名・電話番号等)
乗務員を雇用する場合
  • 就業規則・36協定の届出
  • 新任運転者への指導教育
  • 運転適性診断(NASVA)の受診
  • 指導主任者の選任届
法人新設の場合
  • 法人設立登記(会社設立)
  • 定款への事業目的追加
  • 税務署・都道府県への開業届
  • 社会保険・雇用保険の手続き

運賃の種類と設定方法

運賃は許可取得後に別途認可申請が必要です。事業スタイルに合わせて選択します。

ケア運賃

最も一般的な運賃。介護運賃・民間救急運賃以外の福祉輸送全般に適用します。

  • 距離制:初乗り+加算。最もオーソドックス
  • 時間制:拘束時間に応じた運賃
  • 定額制:施設・エリア単位

※自動認可運賃の範囲内で設定(県・地区ごとに設定あり)

介護運賃

ケアマネのケアプランに基づき、訪問介護員等が訪問介護と連続・一体的に行う輸送に適用します。

  • 距離制・時間制・定額から選択
  • ケア運賃より柔軟な設定が可能
  • 著しく安価な設定は認可されない場合あり

※介護保険適用事業所の指定が前提条件

民間救急運賃

消防機関または連携コールセンターを介した患者搬送に適用する運賃。

  • 消防機関との連携が前提
  • 患者等搬送事業者として搬送する場合

※中部運輸局管内においては該当なし

運賃設定のポイント:ケア運賃は県・地区ごとに自動認可運賃の範囲内で設定します。近隣同業者の運賃を参考にすることをお勧めします。介護運賃はある程度自由な設定が可能ですが、著しく安価な設定は認可されない場合があります。

主な必要書類一覧

※個人・法人の別や状況によって異なります。詳細はご相談ください。

書類名 備考
一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)許可申請書 指定様式。事業計画を詳細に記載
事業計画書 営業区域・車両数・乗務員数等
所要資金および事業資金の内訳書 開業から1年間の所要資金と事業に要する資金の内訳を記載
車両明細書・車検証の写し 使用する福祉車両の仕様書含む
営業所・車庫の図面および写真 外観・内部・出入口。周辺地図も必要
賃貸借契約書の写し(賃貸の場合) 転貸の場合は転貸承諾書も必要
車両制限令に抵触しないことの証明書または幅員証明書 市道→市役所、県道→県。私道は全地権者の承諾書
都市計画法等関係法令に抵触しないことの宣誓書 事前に市町村での確認が前提
登記事項証明書(法人の場合) 履歴事項全部証明書
定款の写し(法人の場合) 一般乗用旅客運送事業が目的に記載されていること
役員の履歴書・運転免許証の写し 全役員分
残高証明書 申請時・許可前の2回。2回目が不足すると不許可
任意保険の見積書または証明書 対人8千万円以上・対物200万円以上
運行管理者・整備管理者の選任届出書 資格証明書の写しを添付

事業者が守るべき主な義務

許可取得後も、道路運送法および旅客自動車運送事業運輸規則に定める義務を遵守する必要があります。

運送引受義務 道路運送法第13条
原則として運送の引受を拒絶することはできません。例外は①約款によらないもの②適する設備がない③特別な負担の要求④法令・公序良俗に反する⑤天災等⑥危険物・泥酔者・感染症者等の正当な事由がある場合に限られます。
区域外運送の禁止 道路運送法第20条
旅客の発地・着地のいずれもが営業区域外の運送は禁止です。営業区域「三重県」の場合、三重県↔愛知県はOKですが、愛知県→岐阜県はNGです。
ダンピング・差別的取扱いの禁止 道路運送法第30条
不当な運送条件での運送禁止、健全な発展を阻害する競争(ダンピング)の禁止、特定旅客への差別的取扱いの禁止が含まれます。
名義貸し等の禁止 道路運送法第33条
他者への名義の利用・事業の貸渡し等は禁止です。許可は許可を受けた事業者本人に帰属します。
その他の主な義務 旅客自動車運送事業運輸規則
運賃・料金・運送約款の公示義務/車両への運賃表示義務/領収書発行義務/苦情処理の記録・保存義務/損害賠償責任保険の締結義務/乗務員の健康状態把握義務(飲酒・疾病等による乗務禁止)/車両の清潔保持義務 等

費用・報酬について

福祉タクシー(4条許可)申請 費用の目安
行政書士報酬
250,000円〜(税別)
登録免許税(許可取得時)
30,000円
その他実費(証明書取得・幅員証明等)
数千円〜
※ 報酬は事案の難易度・法人設立の有無・定款変更の要否等により変動します。
※ 本許可申請は、書類の多さ・審査の厳しさ・法令試験への対応等、難易度の高い申請です。豊富な実績に基づき、スムーズな許可取得をサポートします。
※ まずは無料相談にてお見積りいたします。お気軽にお問い合わせください。

よくあるご質問

Q. 個人事業主でも申請できますか?
A. はい、個人・法人どちらでも申請できます。ただし将来ぶらさがり(78条3号)も取得したいとお考えの場合は、最初から法人格を持つ形で申請するのが合理的です。どちらにすべきかも含めてご相談ください。
Q. 第二種運転免許は申請時に取得済でないといけませんか?
A. 申請時点では必ずしも取得済である必要はありませんが、許可が下りるまでには取得していることが条件です。申請の準備と並行して取得の準備を進めてください。
Q. 申請時に車両がなくても大丈夫ですか?
A. 実際に手元になくても構いませんが、「この車両を使用する」と特定されていることが必要です。新車・中古車を問わず、車両が決まっている状態で申請してください。
Q. 法令試験に不合格だとどうなりますか?
A. 申請は却下されません。約1ヶ月後に再度試験が開催され、再受験することができます。道路運送法等から30問出題され、24問以上(80点以上)で合格です。合格するまでしっかりサポートしますので、当事務所の試験対策テキストをご活用ください。
Q. 残高証明書は何回必要ですか?
A. 申請時と許可前の2回必要です。2回目の残高が予定する運営資金に満たない場合は不許可になりますので、申請中も残高を維持してください(目安:開業2ヶ月分、約200万円程度)。
Q. 自宅を営業所にすることはできますか?
A. 可能な場合があります。第1種住居専用地域であっても、条件を満たせばOKなケースもあります。①都市計画法上、事業用途での使用が認められること(市町村窓口へ事前確認)、②賃貸の場合は居住用途限定の契約でないこと、③1年以上の使用権原があること、が主な条件です。まず市町村への確認から始めてください。
Q. 申請から事業開始まで、どのくらいかかりますか?
A. 書類の準備期間を含めると最低でも6ヶ月以上かかります。開業時期を先に決め、逆算して申請の準備に取り掛かることが重要です。当事務所では最初のご相談時にスケジュール感をお示しします。